宇宙は滅びかけていた。
その全てを説明するには時間が足りないから、今は説明を省くとする。
人々の知能や異能は高まり、更なる進化を遂げた存在になっていた。
その象徴として頭部に生えた立派な一本角は、強い力を持った人間の証だった。
最早、滅びを待つだけの地球のコロニーで少年は檻の中の少女に向き合う。
少女は卵を抱いている。暗く黒く星のように輝く新たな宇宙の卵を優しく愛おしく抱いている。
そうだ。新たな宇宙を創るために、宇宙の卵の依り代として少年の妹は選ばれたのだ。
「 」
彼女は何かを少年に向けて叫んでいる。
叫び、苦しみ、耐えながら。だけどその慟哭に少年は答えることができない。
音も通さない檻の中、彼女は新たな宇宙を想像しなければならない。
一人、虚しく、自分に向き合わなければならない。
ごめんごめんといくら謝ってもその言葉は彼女には届かない。
宇宙が滅んで人間が滅ぶまであと僅か。
新たな宇宙が生まれるのもあと僅か。
今更滅ぶも生きるも意味があるのか、少年にはわからなかった。